潜水喞筒
イラストと短文
喞筒さんのレバーは旅に出ました。しばらくしたら帰ってくるそうです。
[2回]
全ての後、顔を近づけて眠っているかを確かめる。穏やかな呼気に安堵して、ゆっくりと、あやす様に体を揺らしていた。
たった数文字だった。
たった数文字増えただけでなぜ、こんなにも喉の奥から出せなくなるのだろう。
同じ好意を伝えるものだと言うのに、自分はそれを出すことが出来なかった。
以前そんな話を聞いて、自分ならできると豪語していたのに、いざとなったら音は恥ずかしがって顔すら出さず、変にくぐもった呼吸でしか返す事ができなかった。
「……」
体に回している腕に少し力が入る。抱きしめている人の顔が、なぜか泣いているようにも見えて、キイキイとどこかが軋んで痛む。これが、今の感覚が切ない、というのだろうか。
「……」
イヤーレシーバーに口を近づける。眠っている人に届くことはないだろうが、それでも伝えたかった。
「……愛している」
お前のことを、誰よりも、愛している。
詫び、と言うように耳元に口付ける。いつか必ず、目覚めている時に伝えると決意を固め、彼もまた眠りについたのである。
終わり
潜水さんは好きや大好きは言えるけれど、愛しているはなかなか言えない感じがするの。
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