布団の中というのはえらく暗くて、しかもやたらと暑い。酸素を取り込む必要のない体なのに、なぜか息苦しさを感じてしまう。もぞもぞと短い四肢を動かして、顔を布の外に出そうとしたけれど、腕を引っ張られて動けなくなった。
「そとにでてはいけません」
スペアの、小さい体になった彼女が舌足らずに、えらくお姉さんぶって言う。ぐいぐいと僕の手を引っ張る力は強く、いつの間にか僕はスプラッシュの近くに来てしまっていた。
「どうして、そとにでちゃだめなの?」
彼女に尋ねる僕の声も、どこか幼くて自分自身のものなのに違和を感じた。
「ふとんのそとは、おばけがいるのよ。からだがちょっとでもでていたら、そこからたべてしまうの」
スプラッシュの短い、細い手が僕の体にしがみついてくる。やたらと力が強いのは、怖いからだろう。普段なら鼻で笑って済ませられる妄想も、今の彼女にはひどい恐怖のようだ。
「おばけはいないよ、だいじょうぶだよ」
彼女の体に腕を回して、頬を肩に擦り付けながら言うけれど、やはりまだ恐怖は拭えないようだった。
「だめなの、おばけはいないフリして、いるのよ」
たべられちゃやだ。
僕のお腹に顔を埋めて出した声は涙色に染まっていて、心の中がひどくざわついた。
「……わかった。おふとんのなかにいるよ」
そう言うと、スプラッシュが笑ったのがお腹の表面でわかって、顔は見えないけれど、やっぱり笑ってくれるのは嬉しかった。
終わり
スペア機の小さい二人。
ライトさんちのスペア(メンテナンス中に代替で使う奴)は通常機体と変わらないけれど、ワイリーさんちのは資金不足+基地が襲われた時に逃げやすいようにおチビ、って考えてみた。おチビさん達はコアやデータの保護が主な仕事なので武器類は最低限くらいにしかない、とかね。
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