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【2024/05/07 02:04 】 |
キュッキュ(フラッシュとロック)

・フラッシュとロック
・なんとなく腐っているような感じ
・ギャグのようでそうでないような……

そんなお話です

拍手[3回]




ワイリー博士による第二次世界征服計画が発動して数ヶ月――。世界の主要都市でDWNとロックマンの熾烈な戦いが繰り広げられる中、ついにロックマンが最後のDWN、クイックマンの前に膝を着いた。

DWNの本拠地、暗い部屋にスポットライトが一つ灯る。その中心にいたのは、傷つき、意識を失っていたロックマンだった。再起動の音と共に目を覚まし、彼はきょろきょろと辺りを見回していた。
「ハーッハッハ! 敗れたり、ロックマン!」
ロックマンが気がついたを悟ったように、また一つライトが点く。そこに立っていたのは一番最初に敗れたメタルマンである。修理を終えてまだそこそこなので、イヤー部分のアンテナが半分折れていた。
「よくも我らを散々苦しめてくれたな! しかし、それも今日で終わりだ! にっくき貴様には耐え難い屈辱を与えてやろう!」
くつくつとまだひびが入ったままのマスク越しで笑いながら、メタルマンは勢いよく腕を上げる。それと同時に、またライトが灯った。その光の柱の中心に立っていたのは――。
「貴様には……フラッシュの頭を磨いてもらおう!!」
「ちょっと待て!! それがなんで屈辱になるんだよ!!」
これまた修理をそこそこに終えたフラッシュマンだった。照明の光が頭部に反射し、彼の周囲だけが更に明るかった。
「いやそれ以前に敵に頭を預けるなんて確実に命の危険が危ないんですけど!! 俺死んじゃうじゃないの!!」
「負かした相手の世話をさせられるなんて屈辱になるじゃないか。少なくとも、私にとっては屈辱だ。それに周りには他の皆もいるし、お前の命の危険は大丈夫だ」
目を暗視モードにして周りを見れば、なるほど、確かにメタルマンの言うとおり一応修理を終えたエアーとウッドとヒートがいた。ヒートなんぞ、無邪気に手を振っている。
「クックック……、さあ、ロックマン、フラッシュの頭を磨け! そして私はその磨いた後を姑並みの目で見ていやみを言ってやる!」
低音を響かせ、威厳たっぷりに言ってはいるが内容はひどくみみっちいものである。そんなことを聞いてロックマンは、意外なことに素直に床に落ちていた布切れを拾った。てこてこと足音をさせ、フラッシュマンの元まで来て。
「よろしくお願いします」
と、ご丁寧にお辞儀をしたのである。
「え、あ、あ、こちらこそ……」
思わぬ反応に呆気を取られたのはフラッシュ達の方だった。呆然とする彼を気にせず、ロックマンはフラッシュマンの後ろに回ると精一杯背伸びをして……頭を磨き始めたのである。
「ごめんなさい、ちょっと屈んでもらえます?」
「ああ、そうだったな、そのままじゃ磨きにくいだろうし」
ロックマンの言葉を聴き、フラッシュマンは素直に腰を下ろした。彼にありがとう、とお礼を言うと、ロックマンはまた手を動かし始めた。静かな部屋に、ガラス面を磨く心地よい音が広がる。
(……アレ、どういう事だ? 私の予想だと相当嫌がるものだと思っていたが……)
(……そういえばロックマンの前身は家庭用ロボットだったな……)
……もしかして、窓拭きみたいなノリでやっているのか? とメタルマンはマスクの下で口をぽかんと開けたまま考える。しかし一番驚いているのはされているフラッシュマンだったが。
「すいません、綿棒とかってありますか?」
「え、綿棒?」
ロックマンはフラッシュマンの頭のガラス面と強化プラスチック面の境の溝に指を滑らせる。
「こういう、細かいところの汚れを落とすのに使いたいんです、ありませんか?」
「め、綿棒は……すまない、ちょっとないんだ。博士は綿棒じゃなくて耳かき派だし」
もっともいらない情報を零すメタルマンにエアーマンは苦笑する。……彼らは気づいていなかったが部屋の主導権はすっかりロックマンへと移っていた。
「じゃあ仕方ないか、ごめんなさい、ちょっとうまく汚れが取れないかもしれないけど、我慢してね」
そう詫びてからロックマンは――フラッシュマンの頭に呼気を吹きかけた。
「っっっ!!!!」
暖かく、そして水蒸気も含まれているのだろう、少し湿ったような風が吹き、フラッシュマンはぞくぞくと背筋を震わせる。
(な、なんだこれ?! なに、この……)
「ちょっと汚れてるね……ここは念入りに拭かなきゃ……」
キュッキュ、と微かな摩擦音がするが、フラッシュマンの耳には届かない。いきなり激しく動き始めた動力炉の音の方がずっと大きかったからだ。
「ホコリが……縁の方にあるね、あんまり強くすると深く入っちゃうから、軽く拭いて……」
(こ、これは……)
「あ、ここ……僕がつけちゃったのかな、ちょっと傷が出来てる……」
(あ、あ、……)
「もう一回、息を吹きかけるよ」
「アカン! あきまへん!!」
ロックマンが息を大きく吸った時だった。フラッシュマンは勢いよく逃げ出し、目の前のメタルマンの肩を捕まえた。
「メタルマン、あれはヤバイ! 耐えらない! 俺の方が耐えられない!」
「お前、関西弁が使えたのか?」
「いやそんなのどうでもいいから! あの破壊力は絶大すぎる! 一種の羞恥プレイだ! 俺の方が拷問だ!」
色んな意味で恥ずかしい! とフラッシュマンは絶叫する。顔は見えなかったが、きっとロックマンは少し目を閉じ、あの口を軽く窄めて息を吹きかけていたに違いない。いや、絶対にそうだ。
「おい! ロックマンがいなくなっているぞ!」
ロックマンが立っていた所には誰もない。エアーマンは叫ぶがフラッシュマンに気を取られてしまい、彼の叫びに呼応するものは一人としていなかった。

それからまた数ヵ月後。Dr.ワイリーの野望はロックマンによって打ち砕かれた。彼の作ったロボット達は政府の監視付きではあるが、再び本拠地に戻ってきていた。
「フラッシュ、客が来ているぞ」
政府からの仕事を片付けていたフラッシュマンに声をかけるメタルマンの後ろから、ひょっこりと顔を出したのは手に掃除道具一式をつめたバケツを持った――ロックマン、もといロックだった。
「お前……! 何の用だ」
あの時の事を思い出し、フラッシュマンは体をこわばらせる。ロックは持っていたバケツを抱え、少し顔を俯けた。
「フラッシュマン……僕、あの時から、ずっと、ずっと、君の事が気になっていたんだ……」
カタン、とバケツの中の道具が揺れる。僅かな沈黙の後、ロックは顔を上げた。その表情は決意に満ち溢れている。
「絶対に綺麗にするから……フラッシュマン、僕に、君の頭を、徹底的に磨かせてほしいんだ!!」


「ええと、それからこの綿棒で溝の辺りを軽く拭き取るよ」
「なあ、そのアルカリ電解水って汚れが落ちるのか?」
「うん! これはね……」
コンピューターの排気音が微かに聞こえる部屋の中、掃除道具談義に花を咲かせつつ、ロックはフラッシュマンの頭を思う存分磨く。自分よりずっと小さいロボットの嬉しそうな声を聞きながら、フラッシュマンは静かに微笑んでいた。


終わり


アルカリ電解水を使った洗剤的なものを見ていたら、「フラッシュマンの頭を磨くロック」って図が思い浮かんだんです。すいません。


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【2011/07/17 01:15 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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