忍者ブログ
  • 2024.03
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 2024.05
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2024/04/26 07:27 】 |
本(泡潮)


泡潮ですが、泡は出ていません。
ゲストにジュエルさん。
寝室が人間が使っているようなところになっています。

拍手[3回]



「ねえ、なんか本ない?」
時計の針が11時を回った頃、ジュエルはそう言ってスプラッシュの部屋に入ってきた。
「本? どうしたの?」
「なかなか寝付けなくってさ。なんかむつかしい本とかさ、ない?数行読んだだけで眠れるようなの」
スプラッシュは読んでいた本のページに指を挟め、ベッド近くのブックラックに視線を落とした。
「生憎、そういったのは置いていないわよ。博士に頼んだら?」
「博士はダメ、今論文作成中で、机に向かっている」
しょうがないわね、と息を吐き、本をベッドに置いて、壁際にある本棚の方へとえっちらおっちら移動する。そういえば三ヶ月前に買った小説がなかなか難しかったことを思い出し、ジュエルにそれを貸してあげようと本を探す。
少し時間がかかり、ようやく目的のものを見つけて彼に渡そうと振り向くと、自分がさっきまで読んでいた本を捲っているジュエルの姿が見えた。
「!!! ダメ!!」
勢いジュエルに飛び掛り、彼の手にあった本を奪取し、隠すように抱き抱える。
「あれ? なんかだめだった 「どこまで見たの?!」
いまだに彼女の行動理由がわからないジュエルは、きょとんとしながらスプラッシュを見る。よく眺めれば、彼女の頬にはうっすらと朱が走っていた。
「いや、真ん中辺りを数ページ、読んだだけだけど……?」
「……よかったぁ……。」
安堵の息を吐き、スプラッシュは片方の手に持っている「むつかしい」本をジュエルに差し出した。
「はい。これ、たぶん難しいのだから。」
「ありがと。……でもそんな必死になってその本を見せないようにしなくっても。」
「これは、その、アレだから、だめ。」
スプラッシュの頬の赤みはいよいよ濃くなり、頭からは蒸気が出そうな雰囲気である。ジュエルはふうん、と気のない相槌を打った。
「なんだ。……ああ、そうか、それの登場人物、あの人になんか似ている感じだから?」
「え……?」
自分の回答を聞いたスプラッシュの反応が想像と違うので、戸惑いながらジュエルは首をかしげる。
「違うのか? なんか主人公の片思いっぽい人がなんか似ている感じだから、それがいやなのかなーって。」
違うならいいけどさ。
そうひとりごちて、最後に、本をありがとう、と付け加えてジュエルは部屋から出て行った。ドアの向こうへ弟機が消えたのを確かめた後、スプラッシュはようやく体の力を抜いた。
彼女がこの本を読ませたくなかったのは、物語の最後に主人公が片思いをしていた男性と結ばれ、体を重ねる場面があるからだ。これを買った時にはそんなシーンがあると思っていなかったので、最初にそこにたどり着いた時なぞ、本を読みながら悶絶したものである。
「そんなに、似ているかな……?」
ジュエルが似ていると言っていた、主人公の片思いの男の記述に目を通すと、容姿はまったく違うが、性格は、似ている気がしないでもない。特に主人公が彼と結ばれて、ベッドに入る所なんぞは……。
「ああもう!」
本をベッドの端に投げ捨て、羞恥に体をのた打ち回らせる。布団にもぐり、さらに枕を頭に被せて、うつ伏せになる。悶えた頭脳回路が理性を取り戻したのは数分後のことだった。
「……。」
乱暴に投げた本を手元に引き寄せ、本を開いた。物語は主人公が好きな人の腕の中で、幸せに包まれて眠るところで終わっている。暖かい肌に頬を寄せ、愛する人の少しだけ早い心音を聞きながら目を閉じる主人公……。その部分を読みながら、スプラッシュは小さく切ないため息を吐いた。
――好きな人に抱きしめられて眠るのは、どれくらい幸せなんだろう? その人と一緒に朝を迎えるのは、どんな感じなんだろう?
物語の主人公よりも体を繋げたことがあるスプラッシュは、しかし、同じベッドで朝を迎えるなんてことをしたことはなかった。気絶したことは何度もあるけれど、それはごく短い時間で、目が覚めたら朝だったことは一度もない。
お互いの立場を考えれば、本当は恋人同士になることだってありえないというのはわかっている。こうなったことが奇跡に近いことなのだ。
これ以上望んではいけない。それをわかっているはずなのに、欲深い自分は更なる幸せを思ってしまう。
スプラッシュは本をサイドテーブルに置き、電気を消してまた布団に潜る。起きていたら、また欲深いことを考えてしまうから。
おやすみなさい、と虚空に呟く。頭の中で、大好きなあの人のことを思い出しながら。




終わり




スプラッシュとバブルの仲をはっきり知っているのはライトナンバーズではジュエルだけという個人設定。
この話の続きも考えてあるので、そのうち形にします。         エロ有だけど……。


PR
【2011/02/28 01:48 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
<<うちの泡潮(絵) | ホーム | 寝物語>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>