拝啓、偉大な破壊者様へ
私はクラッシュマンと言う、ロボットです。
今日は貴方にお手紙を送ります。お忙しいと思いますが、もしこれに、目を通していただけたら幸いです。私は何分、書くと言う事に不慣れで、この手紙も、三番目の兄(バブルマンといいます。良く海で泳いでいますので、きっと貴方も見た事があると思います)に添削してもらっています。十分目を通してくれたと思いますが、それでも失礼な所があるかもしれませんが、許していただける事を願います。
私のような一介のロボットが、なぜ貴方に手紙を送ろうとしたのか、疑問に思うかもしれません。大変失礼な話ですが、私はつい最近まで、貴方の事をとんと知らなかったのです。いえ、知っていましたが、しかし興味を持たなかったのです。
ですが、兄が――先ほど書きましたバブルマンが――貴方が行いました、破壊の後を写した写真集を見ていたのです。私はほんの気まぐれで、彼の隣に座り、それを覗いていたのですが、貴方様の仕事ぶりにはほとほと感服いたしました。
私はこれまで破壊活動の腕に関しては自負していました。しかし貴方様が行いました、ニホンの、山奥にある鉱山の選鉱所や、或いは、絶海の孤島にある街の建物での破壊活動に、私はシャッポを脱ぎました。
私はこれまで、破壊とは何物も粉々にするのが良いと思っていました。しかし、貴方様の仕事は、私のそれとは対極をなすものでした。豪快でありながら、どこか繊細を持つ貴方の壊し方に、私は最たる美を見出したのです。ああ、あのひび割れ、変色したコンクリートから覗く鉄骨や、朽ちてボロボロと砕けたレンガの破片、そして錆落ちた梁天井……今思い出しても背筋が震えます。
私もこのような仕事をこなしたい、貴方様に一歩でも近づきたい、そう強く思うのです。しかし、聞くところによりますが、貴方様は破壊を行うのに爆弾は使わないそうですね。風や雨、植物などの力を駆使しているとの事。なんとも微細な力です。しかし、それを使うが故に、このように出来るのだ、と兄が話していましたが、そのような事が、私の使用する爆弾でも、出来るでしょうか。ぜひご指導をお願いしたいものです。
ああ、私の事ばかりを書いてしまい、大変申し訳なく思います。そしてまた、長い手紙を書いてしまいました。ここで筆を置く事にいたしましょう。
自然様。
偉大なる創造主にして破壊者、自然様。
貴方様を大変尊敬しております。
DN.013 クラッシュマンより
終わり
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