バブルとスプラッシュのごく短い話。
感覚で書いたらかなりわかりにくいものになってしまいました。
[1回]
「ほら、見て。あそこの家、明かりがついているわ」
車椅子に座ったスプラッシュは、傍らの家を指差して僕に笑いかける。彼女の言うとおり、暗い夜道の脇にある民家には明かりが灯っていた。
「隣の家は二階がついているわ、きっと、ご飯を食べ終わったのね。ああ、あとその隣の家は明かりがついていないわ。まだ、帰っていないのかしら」
あちらこちらを見回りながら、彼女は笑って僕に報告する。その顔の楽しそうなことと言ったらなく、自然と僕の顔も笑っていた。
「他人の家の明かりがついているのが、そんなにおもしろいかい?」
彼女からは見えないだろうけれど、僕は首を傾げて尋ねてみる。スプラッシュは少し口を噤んだ後、こちらを向いて大きく頷いた。
「だって、明かりがついていると言うことは、そこに人がいる、と言うことでしょう?」
姿勢を前に向け辺りを見回した後、彼女は腕を伸ばして大きく払うように動かした。
「私と同じ時間をいて、生活している人がいるって事の証明になるじゃない。世界にはたくさんの人がいる、そのことがわかって嬉しいし、安心できるの」
スプラッシュははにかんだ後、明かりがついた街を見据える。彼女の目にはきっと、生活をしているたくさんの人間の姿が映っているんだろう。
戦闘用で、人間の生活なんて良く知らない僕には、彼女の持つ感覚はわからない。それは少し寂しいけれど、でもスプラッシュの心の一部に触れたような気がして、とても嬉しく感じられた。
終わり
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