深夜のパトロールの後、港にある詰め所に戻るとポンプが椅子に腰掛けて眠っていた。差し入れを届けにきてくれたんだろう、その腕の中にはしっかりとE缶と、カリンカ様とトードが作っただろう弁当包みが抱えられていた。昼間の仕事で忙しいだろうに、わざわざ来なくても、と心配になると同時になぜだろうか、嬉しかった。
そのままの姿勢では彼の体の作り上辛いだろうと思い、横になれるスペースに運ぼうと手を伸ばす。ポンプの胴の中央に位置する飛び出た排水口のせいで背負うことはできないので、俺は横抱きで彼を運ぶことにした。
「よっと……」
起こさないように小さく掛け声を出して彼を持ち上げる。相当眠りが深いのだろう、ポンプの目は閉じたままだった。えっちらおっちらと隣の部屋に続くドアを開け、電気をつけずに俺はベッドに彼を寝かせた。機械の体に寒暖の影響なんかはあまりないが、とりあえず、足元で丸まっている毛布をかけると同時にポンプは寝返りを打った。
「……っ……」
身動ぎして口をもごもごと動かす。気がついたか、と思ったがどうやらまだ目覚める気配はない。再度毛布をかけようと、体の脇にずり落ちた布を掴んだ時、一緒に彼の手にも触れていた。その感触は俺ほどざらざらはしておらず、材質の違いによるものか、僅かに柔らかかった。
ポンプが眠り続けているのを良い事に、俺は彼の手に触れ続けていた。同じカラーリングなのに、ポンプの手は俺よりも小さい。いや、手だけじゃない、体全体がそうだった。今まで意識しなかったが、ポンプは俺よりも小さいのだ。
手を軽く握った後、今度は頬に触れる。長く水辺にいる仕事をしているからだろう、その部分は冷たくてしっとりとしていた。そんな風にされている間も、ポンプの目は閉じたまま、むしろ幸せそうに頬を緩めているような気がした。
なんだか申し訳なくなり、俺はいたずらするのをやめて、ドアの方向に踵を返した。部屋から出る時に少し振り返って彼を見たが、暗闇のせいでよくわからなかった。口の中で自分でもわからないまま言葉を呟いて、扉を閉じ、俺は自分の手へ視線を落とす。
――俺のよりも、あいつの手は小さい。足だって、体だって、あいつは、俺よりも小さいんだ。
ロボットの中でも有数の巨体を持つ俺にとって、それは当たり前のことなのに、ひどく新鮮なものに感じられる。そしてそのことを認識するたびに動力炉がえらく早く、音を激しく出して動いているような気がした。
どうして体がこんな反応をしているのか、と考えるけれど俺のCPUが答えを出してくれることはなく、ただただ、ポンプの顔と彼の手の感触を思い出させるだけだった。
終わり
相手との違いを知って生まれる恋心。ダイブさんがそのことに気づくのに大分時間は掛かるでしょうけれど。ポンプさんはそうなるずっと前から(それこそ10の以前から!)ダイブさんのことが好きなんですが……。
潜水喞筒ってどうですかね? 個人的には泡潮の次くらいに好きなんですが……。一緒に好きになってやるぜ! って方いらっしゃいませんか?
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