スターとギャラクシーの話、ほのぼの……微妙に×かもしれない
自分設定あり
[3回]
「ギャラクシー、今日はどれを見ようか」
画面に映し出された数え切れないほどのサムネイルには、古い衣装を着た人間達が映っている。どれもこれも、有名なミュージカルの一場面を切り取ったものだ。スターの膝の上に乗ったギャラクシーは目を輝かせながらそれらを眺めていた。
「この前見たのはこれだよね。」
目の前の画像の一つを指さし、ギャラクシーは笑う。スターは彼の丸い頭を撫でながら、彼が指差したサムネイルに触れた。緑色の衣装を着た人間が映った絵がふわり、と大きくなり、説明文とコマンドが映し出された。
「ピーターパン! すごかったよね、お空を飛んでいるの!」
「ギャラクシーも空は飛べるじゃないか」
「そうだけど……でも僕はあんなに楽しそうに飛べないもん。」
ギャラクシーの表情はわかりにくいが、彼が今、頬を膨らませているのがスターにはわかった。
「そうかぁ。でも君だって、私から見たら楽しそうに空を飛んでいるよ?」
頬を擦り付けてギャラクシーに言うと、彼は嬉しそうに笑った。
「じゃあ今日はこれを見るかい?」
再生ボタンの近くに手を置いて尋ねる。ギャラクシーは少し考えてから首を振った。
「今日はこれがいい。」
大きくなった画像の脇にある、女の子と犬が写ったサムネイルを指差す。スターがギャラクシーが指差したそれをつつくと、先ほどと同じように大きく映し出された。一人と一匹が写った写真の上には、Annieとタイトルが大きく書かれていた。
「アニーか。ギャラクシーはこれが好きだね。」
「だってこれは見ていて楽しいんだもん。それに最後がハッピーエンドだし」
「ギャラクシーはハッピーエンドの方が好きかい?」
尋ねると、小さな銀色の機体は大きく頷いた。
「もちろん! だってそっちの方が幸せになれるもの。どんなお話だって、ハッピーエンドの方がいいよ……」
語尾がだんだんと小さくなり、かすれて消えそうなほどの音で呟いた後、ギャラクシーはぎゅう、とスターの腕にしがみついた。処分されそうになった時のことだろうか、それとも自分より先にいなくなった他のロボットの事だろうか、何かを思い出したらしい。スターは小さく震えるギャラクシーを、そっと抱きしめた。
「そうだね、幸せになれた方がいいよね。」
イヤーレシーバーに優しく囁くと、ギャラクシーは何度も何度も、怖い記憶を振り払うように頷く。そんな彼の背中を、スターは人間が赤ん坊をあやすようにぽんぽんと軽く叩いた。
「……ごめんねスター。」
「いいんだよギャラクシー。」
少しだけ強く抱きしめた後、二人は体を離し、見つめ合って笑った。
「……元気が出るように、アニーを見ようか」
「うん!」
ギャラクシーが膝の上に座ったのを確認してから、スターは映像の再生ボタンを押した。画面が更に大きくなり、連動するように照明が落ちた。
「いつも思うけど、本当の劇場で見ているみたいだね。」
「そうだね、今度これがあったら、劇場で見ようか。」
そう提案したが、ギャラクシーは頭を横に振った。
「僕ここでいい。」
「どうして?」
「ここだと、大きい声で歌ってもいいし」
それにね、とそこで言葉を切って、手をモジモジ動かした後、ギャラクシーは呟く。
「スターの膝が一番いいから」
ギャラクシーの言葉を聴き、スターにっこりと笑って口を動かした。何かを言っていたらしいが、同時に音楽が始まったので、ひざの上の小さなロボットにその言葉は届かなかった。ただ、話し始めたと同時に握られた手から、彼が何を言いたかったかギャラクシーにはわかっていた。
暗く、ほのかな明かりだけの部屋に、やがて歌声が混ざり始める。それは大きなものになり――隣の部屋のチャージが「五月蝿い!」と怒鳴り込んでくるほどになるのは、ほんの少し後のことである。
おわり
うちのスターはギャラクシーと仲良し。恋人未満なのかもしれない。
・スターの趣味はオペラ鑑賞らしい。
・オペラって悲劇が多いし、人間模様が難しいからギャラクシーはあまり好きじゃないだろう
……と考えてミュージカル鑑賞。スターはミュージカルも見ているかもしれないし。
オペラ以外にも、バレエも見たりするんだろうか。だとしたらコサックさんとバレエやっている劇場で鉢合わせなんかもあるんだろうか。
考えていることと言葉が追いつかなくて困る。本当に困る。
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