R20+5の準備考チルドのイラストから妄想した物
チルドはコサック博士が作ったとか言うすっごい捏造設定の話です
時系列は10の後辺り
[1回]
液晶画面には様々な映像が映る。礼儀正しい振る舞いを見せるアナウンサーや、砕けた会話を弾ませるタレント達、スポーツ選手が汗を流している姿や、優雅な衣装を纏った空想のキャラクターが空を駆け回る絵が、次々と平面に躍り出ては虚空に消えていった。
「……」
しかしそのどれもが、テレビの前の人物――チルドマンのお気に召さなかったらしい。彼は短く息を吐くと、リモコンのスイッチを押してソファーに身を沈めた、が、その感触にもなれないらしく、眉間から一向に皺が取れる気配はない。
居心地が悪かった。この部屋、いや、建物が、更に言うならば住人が悪いわけではない。ここは研究所と言うわりには家庭的で、柔和な空気が漂っている。住んでいる人達もその誰もが暖かく世話焼きで、意地の悪い者はいないのだ(一部からはそうじゃない、と言われていたりするが)
では何が悪いかといえば、結局は自分の心構えなのだろう、と自虐的な考えを浮かべてチルドは天井を仰いだ。あれこれ考えず、ただその和に入ってしまえばよいのに、遠慮のような物を勝手に感じて遠巻きになっているだけなのである。
(ただの客人だったら、こんな思いはしなかったのかなぁ)
ごろり、とソファーの縁に顎をつけ、ぼんやりと考える。様々な事情の為に、チルドは作られてすぐに自然観測所へと送られていた。その僅かな合間に会えたロボットは開発に携わったと言うブライトだけである。だから、父たるコサック博士や彼の娘のカリンカから、ここのロボット達は兄弟である、と言われてもいまいちピン、と来なかった。他のロボット達はそのように感じていないようなのだが、その事がますますチルドが覚える疎外感を刺激していたのだ。
「手持ち無沙汰か?」
憂鬱が積もり始めていた頭に、ぽっとりと声が落ちてきた。音がした出入り口の近くに目を見やると、骸骨を模したロボットが立っている。
「スカル、マン……?」
名前を少々つかえながら呼ぶと、チルドは体を起こす。彼の座れる分のスペースを作ると、スカルは礼を口にする代わりに頭を下げ、どかりとそこに座った。
「…………」
話しかけようと口を開くが、妙な気後れを感じ、チルドは唇を閉ざしてしまう。機会を窺い、彼の言葉の真意を探ろうとしたが、先に動いたのはスカルのほうであった。
「居心地悪そうだ。俺と同じ顔していた」
「同じ、顔……」
呟きながら面を窺うも、生憎、スカルの顔はマスクで覆われ、細かい表情を見る事は出来ない。それでもチルドは、彼から目を離さなかった。
「馴染めなくて、どうしたらいいかわからない。どこにいたらいいかわからない。俺は仲間なのか、そうじゃないのか、わからない」
ふらりと揺れる声に、チルドもついで不安になる。……そういえばスカルの製作にはあのDr.ワイリーが関わっていたという。だとすれば感じた疎外感は、自分より格段だっただろう。
「お互い、わからないんだよ。どうやって話したらいいかって。触れたらいけない部分がでかすぎて。でも、わからないで終わらせたら、溝は大きいままだ。俺は特に、戦う以外、なにもなかったからひどかった。そうしてたら、カリンカね……お嬢さんが、色々と教えてくれた」
お嬢様が、と独り言のように口にすると、スカルにはうん、と一つ頷いた。……どうやら彼は、この呟きを質問だと捉えたらしい。
「お嬢さんは凄いぞ、あの人はこれだと決めたら何にも考えずに進んでくる。最初は面食らって、止めようとするけれど、お嬢さんは力が強いからな、簡単に引き摺られる。でも、それは悪い事じゃないんだよ。お嬢さんに振り回されるうちに、抱えていたあれこれがなくなって、気付いたらそこそこ、他の連中と打ち解けていたりするんだ。子供のパワーって奴らしいが、凄いぞ、あれは」
そこまで話して、スカルはすまない、と頭を下げた。
「なにを言っているか、わからなくなった。俺の独り言みたいになったな」
「いいえ、そんな……。興味深かったですよ、スカル、兄さんが皆に打ち解けていく様子を聞けるなんて。まあ……ちょっと抽象的でしたけれど」
チルドは、ここで始めて頬を緩めた。どれくらい久しぶりなのだろうか、ここに来てからはずっと、笑っていても力が入っていたような気がするのだ。
「どうしても手持ち無沙汰がひどかったら、カリンカお嬢さんを頼るといい。お前には、まだ、俺と違って色々持っているものがあるから、そこから話していけば大丈夫だ」
「色々……ですかねぇ」
そんなにあるかしら、とチルドが傾げると、あるさ、と返事が届く。呟いたスカルは何かを肯定するように何度も頷いた。
「お前は北極、だかにいたんだろう? ここも寒いけれど、そっちはもっとだって、聞いた。……俺は物をよく知らないから、そこの事はわからないけれど、そういった話を、お嬢さんは喜ぶぞ」
「ええ……スカル兄さん、良ければ練習に、北極の話を聞いてもらえませんか?」
恐る恐る、チルドはスカルに尋ねる。聞かれた彼は少し黙っていたが、やがてゆっくりと頷いた。
「ああ。俺は物を知らないから、そういった話は歓迎だぞ」
「そうですか、それは良かった。それじゃあ僕が……」
互いに顔を合わせ、チルドがそう告げた瞬間、入り口のドアが開く。そこに立っているのは、小さな女の子だ。
「あら、スカルにチルド何をしていたの?」
トコリトコリと近寄って、二人の間にカリンカは腰を下ろす。その顔はいつもと同じように楽しげである。
「ええ、お嬢さん、チルドから、北極って所の話を聞こうとしていたところです」
「まあ、ズルイのねスカルったら! 私も聞きたいわよ、チルド、北極にはどんな動物がいたの? 可愛い子はいたかしら?」
「ええ、いましたよ、例えば……」
自分の知るいくらかを話すうちに、チルドは気づいた。抱えていた疎外感が、いつの間にか消えていた事に。その事実を理解し、飲み込んで、彼はようやく本来の笑顔を浮かべたのである。
終わり
チルドの準備考イラスト、パワー系の時は頭が凄いロシアっぽい→ヒーロータイプになった時のイラストにもロシアっぽいのがあったりする→ロシア辺りといやコサック博士→チルドはもしかしてコサック博士が開発に携わった可能性が……! と言うひどい連想から始まったチルドマンコサック博士製作説。。でもコサック博士開発だったら頭氷付けにはしないような気もする。
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